鵜坂神社は、富山県富山市婦中町鵜坂に鎮座する由緒ある神社です。平安時代の法典『延喜式』に記載された式内社であり、古くから朝廷公認の格式ある神社として尊崇されてきました。安産や縁結びの神として広く知られ、地域の人々はもちろん、遠方からの参拝者も訪れます。
現在の主祭神は淤母陀琉神(おもだるのかみ)と訶志古泥神(かしこねのかみ)で、鵜坂姉比咩神・鵜坂妻比咩神・大彦命などが配祀されています。社名のとおり、本来は「鵜坂神」が主祭神であったとする説もあり、配祀神はその姉神や后神であると伝えられています。
大正時代には旧鵜坂村内の神社が合祀され、天照皇大神、豐受大神、譽田別大神、豐玉姫命、倉稻魂神、建御名方命、水波賣神、天兒屋根命など、多くの神々があわせて祀られるようになりました。
社伝によれば、創祀は約二千年前、崇神天皇の御代に北陸道将軍・大彦命が勧請したことに始まるとされています。白雉2年(652年)に社が創立されたと伝えられ、平安時代には神階従三位に叙せられました。白河天皇や堀河天皇の御代には、病気平癒の祈祷が行われた記録も残されています。
また、万葉の歌人・大伴家持がこの地を訪れ和歌を詠んだと伝えられ、境内にはその歌碑が建てられています。古代から文化と信仰の拠点であったことがうかがえます。
神社には鎌倉時代初期の作とされる二体の木造神像が安置されています。一体は高さ29.5cmの「木造僧形神像」で、杉の一木から彫り出された合掌姿の像です。もう一体は高さ50.5cmの「木造男神像」で、檜材を用い、烏帽子をかぶり笏を持った束帯姿でどっしりと座しています。
境内は神通川を背に本殿が建ち、正面に拝殿と鳥居が整然と配置されています。拝殿の左側には、かつて神宮寺として栄えた鵜坂寺の名残である墓石が残されています。参道脇には「疣石(いぼいし)」と呼ばれる石があり、疣や痔に霊験があると伝えられています。
歳旦祭(1月1日)、建国祭(2月11日)、祈年祭(2月23日)、例大祭(4月29日)、新嘗祭(11月23日)など、年間を通じてさまざまな神事が執り行われます。
かつては「楉祭(しもと祭)」または「尻打祭」と呼ばれる独特の神事が行われていました。安産や縁結び、子孫繁栄を願う行事として知られ、日本五大奇祭の一つに数えられました。明治以降は形を変え、第二次世界大戦後に廃絶しましたが、その名は今も語り継がれています。
公共交通機関を利用する場合は、富山駅からJR高山本線で約15分、婦中鵜坂駅下車後、徒歩約30分です。車の場合は、富山西ICから約15分で到着します。
鵜坂神社は、二千年にわたる歴史と地域に根差した信仰を今に伝える静かな社です。安産や縁結びを願う参拝はもちろん、古代の文化や万葉の時代に思いを馳せながら境内を散策する時間は、訪れる人の心を穏やかにしてくれることでしょう。