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越中八尾曳山祭

(えっちゅう やつお ひきやま まつり)

坂の町を彩る豪華絢爛の春祭り

越中八尾曳山祭は、富山県(越中国)富山市八尾地域で毎年5月3日に行われる、歴史と格式を誇る春季祭礼です。祭りは八尾の産土神である八尾八幡社の神事として執り行われ、江戸時代中期より約280年以上にわたり受け継がれてきました。かつては3月や4月に開催されていましたが、現在は新緑が薫る5月3日に定着しています。

坂の多い町並みを背景に、絢爛豪華な六基の曳山が練り歩く姿は圧巻であり、八尾町人文化の繁栄を今に伝える壮麗な絵巻物のようです。八尾の春を告げる一大行事として広く親しまれています。

祭りの歴史と町人文化の誇り

八尾は江戸時代、富山藩の御納戸所として栄え、養蚕業や和紙産業によって豊かな財力を誇りました。その経済的基盤のもと、豪商たちが競うように曳山を造営し、町人文化の象徴として発展させていきました。

豪商たちの財力と心意気によって造り上げられた曳山は、 彫刻、漆工、彫金、金箔など越中美術工芸の粋を集めた芸術作品であり、 今なお当時の繁栄を物語っています。

起源は1741年、上新町が花山車を製作したことに始まると伝えられています。その後、各町が次々と曳山を加え、明治時代中期には現在の六基体制が整いました。1965年には「八尾町祭礼曳山」として富山県有形民俗文化財に指定されています。

坂の町を巡る曳山巡行

祭礼には、八尾町市街地の六町がそれぞれ一基ずつ曳山を保有し、 さらに鏡町が獅子舞を担って参加します。 巡行は獅子舞、神輿、曳山の順に進み、「東上がり」と「西上がり」の二通りがあり、毎年交代。 巡行順も前年の二番山が翌年の一番山になるなど、 毎年変化するのが特徴です。

とりわけ、日本の道100選にも選ばれた諏訪町本通りや東新町の石畳の坂道での曳き回しは見どころのひとつです。狭い辻で巨大な曳山を回転させる「角回し」では、若衆が息を合わせ、太鼓の合図とともに一気に車輪を軋ませながら方向転換を行います。

高さ約7メートル、重さ約4トンにも及ぶ二層構造の曳山は、 三味線・横笛・太鼓による優雅な曳山囃子に合わせて、 若者たちが揃いの法被姿で曳き廻します。 坂の多い八尾の町を力強く進む姿は壮観です。

角回しと掛け声

曳山巡行最大の見どころは、辻での「角回し」です。 太鼓が打ち鳴らされる中、曳き手たちが息を合わせ、 車輪を軋ませながら一気に方向転換します。 特に東新町の石畳の坂道や、 八幡社奉納時の角回しは圧巻です。

曳山が動き出す際には 「ホリキノ ミッツノ ヨーカンボー」 という独特の掛け声が響きます。 その由来には諸説ありますが、 長い歴史の中で意味が定かでなくなっていること自体が、 祭りの奥深さを物語っています。

夜を彩る幻想的な提灯山

夕刻、十三石橋付近に曳山が集結すると、昼間の彫刻や装飾を外し、約400個もの提灯を取り付けた「提灯山」へと姿を変えます。六基合わせて約2,500個の灯がともり、坂の町に幻想的な光景が広がります。

漆黒の夜に浮かび上がる曳山は、まさに不夜城のごとき迫力です。提灯の柔らかな灯りに包まれながら、八尾八幡社への奉納角回しが行われ、祭りは最高潮を迎えます。

提灯の灯は現在LED化が進んでいますが、 下新町では今も一部にろうそくを用い、 温かみのある揺らぎを守り続けています。揺れる灯りに照らされた曳山が夜の町を進む光景は、 訪れる人々を幻想的な世界へと誘います。

獅子舞と神輿 ― 祭りを支える存在

祭りの先頭を務めるのが鏡町の獅子舞です。 露払いとして巡行路を清め、 神輿、そして曳山へと続きます。 獅子頭は井波彫刻の名工による作とされ、 夫婦獅子が舞う姿は勇壮かつ優雅です。

神輿は1813年(文化10年)作。 かつては担がれていましたが、 現在は車輪付きで曳かれています。 町境では氏子たちが受け渡しを行いながら巡行します。

六基の曳山 ― 匠の技が生きる芸術作品

曳山は高さ約7メートル、重さ約4トンにも及ぶ二層構造の屋台形式で、釘を一本も使わず麻縄や楮の皮で組み上げられます。彫刻、漆工、彫金、金箔といった越中美術工芸の粋が凝縮され、屋根には鳳凰や鯱、飛龍などの飾りが輝きます。

下層部分には三味線、笛、太鼓の囃子方が乗り込み、古式ゆかしい曳山囃子を奏でます。浄瑠璃や長唄などを取り入れた雅な調べが町中に響き渡り、観る者を優雅な世界へと誘います。

調曳と神迎え ― 受け継がれる伝統

5月1日には「調曳(ちょうびき)」と呼ばれる試し曳きが行われ、地元の子どもたちも参加します。祭り前夜には御神体を迎える神迎えと神前囃子が執り行われ、本番に備えます。

祝い唄「おきんさ」と祭りの余韻

夜遅く、各町へ戻った提灯山を囲み、若衆や町民が祝い唄「おきんさ」を歌います。無事の巡行を喜び合い、来年への思いを新たにするこのひとときは、祭りの締めくくりとして心に深く刻まれます。

八尾曳山展示館 ― 伝統を間近に感じる

祭りの感動を年間を通して体感できるのが、八尾曳山展示館(越中八尾観光会館)です。 常時三基の曳山を展示し、 彫刻や工芸の美しさを間近で鑑賞できます。

館内では養蚕資料や、 八尾出身の版画家・林秋路の作品展示も行われ、 町人文化の背景を学ぶことができます。 また多目的ホールでは、 おわら風の盆関連の演奏や踊りのステージも開催され、 八尾の伝統芸能を体感できます。

文化財としての価値

六基の曳山は1965年、 「八尾町祭礼曳山」として富山県有形民俗文化財に指定。 さらに「とやまの文化財百選」にも選定され、 2011年には保存会が文部科学大臣表彰を受けています。

八尾の誇りとして未来へ

越中八尾曳山祭は、豪商文化の象徴であると同時に、地域の結束と信仰心の表れでもあります。坂の町を進む曳山の勇壮な姿、夜空を彩る提灯の灯、そして囃子の音色は、八尾の歴史そのものです。

春の八尾を訪れ、この壮大な祭礼の息吹をぜひ体感してみてはいかがでしょうか。

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越中八尾曳山祭
(えっちゅう やつお ひきやま まつり)

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