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ます寿し(富山県)

(マスずし)

駅弁などでおなじみ、マスが色鮮やかな押し寿司

ます寿しは、富山県を代表する伝統的な郷土料理であり、全国的にも駅弁として広く知られている押し寿司の一種です。薄紅色に輝く(主にサクラマス)の切り身が酢飯の上に美しく並べられ、その彩りの美しさと上品な味わいで多くの人々を魅了してきました。表記は「ます寿し」「ますの寿し」「鱒の寿司」などさまざまですが、いずれも同じ料理を指しています。

ます寿しの歴史と由来

ます寿しの歴史は古く、江戸時代の享保年間(18世紀初頭)にさかのぼるとされています。当時、富山藩士で料理の名手であった吉村新八が、三代藩主前田利興のために鮎の鮓を作りました。その味に感銘を受けた前田利興が、八代将軍徳川吉宗へ献上したところ、食通として知られた吉宗がその美味しさを絶賛したと伝えられています。

当初は鮎を使用していましたが、やがて春に神通川へ遡上するサクラマスが用いられるようになり、現在の「ます寿し」の原型が完成しました。神通川流域の豊かな自然と良質な越中米が、この名物を育んできたのです。

駅弁として全国へ広がる

ます寿しが全国的に知られるようになった大きなきっかけは、大正時代に駅弁として販売されるようになったことでした。1912年には「ますのすし」として商品化され、鉄道網の発展とともにその名は日本各地へと広まりました。

現在では富山駅をはじめ、高岡駅や金沢駅、さらには東京駅や大阪駅などでも購入することができ、百貨店の物産展や駅弁大会でも人気を集めています。観光客にとっては旅の思い出として、また贈答品としても重宝される存在となっています。

伝統的な製法と美味しさの秘密

ます寿しは、木製の丸い曲げわっぱの底に笹を放射状に敷き、その上に塩漬けし味付けした鱒の切り身を美しく並べます。さらに酢飯を押しながら詰め、笹で丁寧に包み込み、重石をして仕上げます。笹の香りがほのかに移ることで、爽やかな風味が加わり、時間とともに味がなじんでいきます。

一般的には一段のものと二段重ねのものがあり、店舗によって鱒の厚みや酢の加減、押しの強さが異なります。そのため、多くの富山県民が「自分のお気に入りの店」を持っていることも特徴の一つです。現在、富山市内だけでも数多くの専門店が軒を連ね、職人が一つひとつ丁寧に伝統の味を守り続けています。

食べ方と楽しみ方

食べる際には曲げわっぱの蓋を外し、笹に包まれたまま放射状に切り分けます。専用の小型ナイフが添えられていることも多く、笹の上から引くようにして切り分けるのが特徴です。切り分けた瞬間に広がる笹の香りと、艶やかな鱒の色合いは、視覚と嗅覚でも楽しませてくれます。

通年購入することができますが、特に祭事やお盆、年末年始などのめでたい席で食されることが多く、富山の人々にとっては特別な日の味でもあります。家庭で作られることは少なくなりましたが、その分、専門店の味に対する信頼と誇りは今も受け継がれています。

現代に広がる多彩なバリエーション

近年では従来の丸型だけでなく、小ぶりのサイズや棒状のもの、簡易包装の商品など、さまざまな形態が登場しています。また、鱒の代わりにブリやカニを使用した派生商品も生まれ、伝統を守りながらも時代に合わせた工夫がなされています。

2014年には富山市内のイベントで直径3メートルの巨大ます寿しが制作されるなど、その人気と知名度の高さを物語る出来事もありました。

富山観光とともに味わいたい逸品

ます寿しは、富山の豊かな自然、歴史、そして人々の技と誇りが詰まった一品です。観光で訪れた際には、ぜひ専門店を巡り、それぞれの味の違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。旅の思い出として、また大切な人への贈り物としても最適な、富山が誇る伝統の味です。

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名称
ます寿し(富山県)
(マスずし)

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