櫛田神社は、富山県射水市串田に鎮座する由緒ある神社です。延喜式神名帳にその名が記される式内社であり、旧社格は県社。古くから地域の人々の篤い信仰を集め、現在では縁結び・夫婦円満・家内和合の神様として広く知られています。
静かな森に包まれた境内は、四季折々の自然が美しく、訪れる人の心をやさしく迎え入れてくれます。これから新たなご縁を結ぼうとする方も、すでに大切なご縁に結ばれている方も、人生の節目にそっと寄り添ってくれる場所として親しまれています。
櫛田神社は、社伝によれば仲哀天皇の時代に武内宿禰(たけのうちのすくね)が勧請し創祀したと伝えられています。さらに、天平勝宝3年(751年)には万葉の歌人大伴家持が勅使として参拝したと伝わり、その歴史の深さを今に伝えています。
家持は、この神社の鎮まる森を「古能久礼山(このくれやま)」「奈良比丘(ならびおか)」と呼んだと伝承されています。万葉の歌人が心を寄せた杜は、時代を超えてなお、静謐で気高い雰囲気を湛えています。
また、戦国時代には武将たちもたびたび参詣したといわれ、地域の精神的支柱として重要な役割を果たしてきました。
櫛田神社の主祭神は、武素盞嗚尊(たけすさのおのみこと)と櫛稲田姫命(くしなだひめのみこと)です。日本神話において夫婦神として知られる御二柱は、固い絆で結ばれた象徴的な存在であり、縁結び、夫婦円満、家庭円満の神様として篤く崇敬されています。
さらに、武内大臣(武内宿禰)、豊臣大臣(豊臣秀吉)、源義将君(斯波義将)、大亜利家(前田利家)などの人物神を配祀。加えて明治時代の合祀により、天照皇大神、少彦名命、豊玉姫命、底筒男命(住吉神)、息長帯姫命・誉田別命(八幡神)、天満天神(菅原道真)など、多くの神々が祀られています。
なお、『越中國式内等舊社記』には当社の祭神を大若子命と記す説もあります。これは筑前国の櫛田神社の主祭神・大幡主大神の別名ともいわれ、古代から続く信仰の広がりを感じさせます。
境内には、根元から二本に分かれて寄り添うように伸びる「夫婦杉」があります。その姿はまさに夫婦和合の象徴であり、多くの参拝者が手を合わせていきます。
また、約250メートルにおよぶ長い参道は、木立に囲まれた心地よい散策路となっています。四季の花々や木々の彩り、盤持石などを眺めながら歩くひとときは、まるで森の中を巡る小さな旅のようです。初詣の時期には特に多くの参拝者で賑わい、温かな祈りの空気に包まれます。
この地には古くから伝わる伝説があります。かつて近くの大きな池に大蛇が棲み、村人を苦しめていました。あるとき、娘を呑み込んだ大蛇は、その娘が髪に挿していた櫛が喉に刺さり命を落とします。村人たちは娘と櫛を祀り、これが櫛田神社の始まりになったと伝えられています。
櫛(くし)に由来する社名とともに、地域に根ざした信仰の原風景を今に伝える物語です。
櫛田神社の秋季例大祭では、勇壮な火渡り神事が執り行われます。燃えさかる火の上を渡る神事は、心身の浄化や無病息災を祈る神聖な儀式として多くの参拝者を惹きつけます。地域の伝統文化を体感できる貴重な機会です。
境内には、射水市出身のステンドグラス作家大伴二三彌(おおともふみや)の功績を顕彰する大伴二三彌ステンドグラス記念館が併設されています。2007年12月に開館したこの記念館は入場無料で、約40点の作品が展示されています。
「ぼくは神明造りのこの簡素な社が大好きなんだ」と生前語っていた大伴氏。櫛田の杜をこよなく愛したことが、記念館建立のきっかけとなりました。
1921年、現在の射水市八幡町に生まれた大伴二三彌は、日本におけるステンドグラス芸術の先駆者として活躍しました。油彩や彫刻、産業デザインを学び、戦後、日本独自のステンドグラス表現を追求します。
JR東京駅の「天地創造」、池袋サンシャインシティの「群像・人と獣」、射水市新湊中央文化会館の「陽光」など、全国各地に代表作を残しました。西洋由来のステンドグラスをどのように日本化するか、光の内外が生み出す変化をどう表現するかを生涯探求し続けた芸術家でした。
境内にはステンドグラスをはめ込んだ灯籠も設置され、社殿の神門(2019年新設)にも光の装飾が施されています。伝統的な神社建築と現代芸術が静かに調和する景観は、ここならではの魅力です。
櫛田神社は、歴史探訪と自然散策、そして芸術鑑賞を同時に楽しめる貴重な観光スポットです。厳かな社殿で心を整え、夫婦杉の前で願いを込め、長い参道を歩きながら四季の息吹を感じるひとときは、日常を離れた特別な時間となるでしょう。
さらに、ステンドグラス記念館では光と色彩が織りなす幻想的な世界に触れることができます。縁結びのお守りにはステンドグラスの刺繍があしらわれ、芸術と信仰が結びついた温かな祈りの形が感じられます。
境内には駐車場が整備されており、お車での参拝も便利です。また、射水市コミュニティバスを利用し「松原公民館前」で下車すぐの場所にあります。
静かな森に包まれた櫛田神社は、人生の節目や大切な人との絆を確かめる場として、多くの人々に親しまれています。歴史と伝説、信仰と芸術が調和するこの杜を、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。