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氷見祇園祭

(ひみ ぎおん まつり)

港町に響く「イヤサー」の声、夏を告げる三日間

氷見祇園祭は、富山県氷見市の中心市街地で毎年7月13日・14日・15日の三日間にわたり開催される、氷見を代表する夏祭りです。御座町の日吉神社と中町の日宮神社に合祀されている八坂神社(祇園社)の夏季例大祭として、江戸時代中期より続いてきました。「氷見の祇園祭礼(曳山・太鼓台)」とも称され、2006年(平成18年)には「とやまの文化財百選(とやまの祭り百選部門)」にも選定されています。

祭りの最大の見どころは、地元で「タイコンダイ」と呼ばれ親しまれる太鼓台と、勇壮な御神輿の巡行です。「イヤサー、イヤサー」の威勢のよい掛け声とともに、華やかで力強い山車が町を練り歩く光景は、氷見の夏の風物詩として多くの市民や観光客を魅了しています。

疫病退散の祈りから始まった祭り

氷見祇園祭の起源については諸説ありますが、いずれも共通しているのは、元禄期を中心とする江戸時代に氷見一帯を襲った疫病の流行です。人々は悪病退散を願い、京都の八坂神社より祇園神(牛頭天王)の分霊を勧請し、平癒祈願を行いました。その結果、疫病が鎮まったことに感謝し、神霊を神輿に奉じて町内を巡行したのが祭りの始まりと伝えられています。

京都の祇園祭に倣いながらも、港町・氷見ならではの風土と信仰を色濃く反映した祭礼として、今日まで受け継がれてきました。祈りと感謝の心が、いまも祭りの根底に息づいています。

湊川を挟む南北の町と祭礼構成

氷見の中心部を流れる湊川を挟み、南側には日吉神社を崇敬する南10町(現在は中伊勢町を加え南11町)、北側には日宮神社を崇敬する北6町が存在します。古くは旧暦6月13日から15日にかけて、南10町が曳山を、北6町が「たてもん」と呼ばれる大型山車を曳き回していました。

現在は、13日と14日に御神輿の渡御にあわせて、南11町と北6町の太鼓台が巡行し、南側では現存する5基の曳山も曳き回されます。とくに14日夜には太鼓台同士が激しくぶつかり合う「ぶつけ合い」が行われ、観衆を大いに沸かせます。

氷見独特の太鼓台 ― タイコンダイの魅力

太鼓台は、小型の四輪地山の中央に松の木を立て、多数の提灯を飾り付けた独特の構造をしています。前方には鳥居、その下には太鼓が据えられ、鳥居の上には「御神燈」や「祇園大祭」と書かれた行燈が掲げられます。

若衆たちは太鼓台を左右に大きく揺さぶりながら進み、その迫力ある動きと勇ましい掛け声が町に響き渡ります。14日の夜に行われる「ぶつけ合い」は祭り最大の見せ場で、互いの太鼓台をぶつけ合う勇壮な様子は、氷見祇園祭ならではの醍醐味です。

南10町の曳山 ― 花鉾山車の優美な姿

かつて10基存在した曳山は、明治・昭和の大火により多くが焼失しました。明治の大火後は再建が進みましたが、昭和13年の氷見大火で5基が焼失。現在は5基が現存し、祭礼で曳き回されています。

これらの曳山は、二層構造の花鉾山車で、中央に立つ鉾柱(心柱)の周囲に色とりどりの花をあしらった花傘を広げる華やかな姿が特徴です。下層には赤い刺繍入りの掛幕が張られ、各町の意匠が施されています。

現存する五基の曳山

御座町

最も創建が古いとされる曳山で、布袋を本座とします。現在唯一、笛・三味線・太鼓による曳山囃子を生演奏で行う町として知られています。2013年には「御座町曳山館」が完成し、土日祝日に一般公開されています。

南上町

明治15年の大火後、1903年に再興。本座は中国古代の帝王・堯帝。優雅な操り人形の前立人形が特徴です。

南中町

昭和の大火で焼失後、1976年に再興。高さ約7メートルの堂々たる姿で、本座は孔子。脇立人形や前立人形も見ごたえがあります。

上伊勢町

1900年再建。本座は大黒天。千枚分銅と宝珠の鉾留が特徴で、14日のみ曳き回されます。

地蔵町

江戸時代の面影を最も残す曳山。本座は福禄寿で、前立人形には本物の猿の毛皮が用いられています。

北6町のたてもん ― 失われた巨大山車

北6町ではかつて「たてもん」と呼ばれる高さ15メートルを超える巨大山車を曳いていました。竹枠に和紙を貼り彩色した人形は圧巻で、歴史や伝説の人物が題材とされました。

しかし電線の普及により対応が難しくなり、1915年の巡行を最後に廃絶しました。現在はその姿を見ることはできませんが、氷見祇園祭の歴史を語るうえで欠かせない存在です。

三日間の祭礼日程

7月1日 ― 1日寄り合い

祭礼の詳細を決定する世話方会議が開かれ、各町が準備を開始します。

7月13日 ― 祭礼初日

夜に修祓神事が行われ、御神輿が渡御を開始。御座町・南上町・南中町の提灯山が曳かれ、幻想的な光景が広がります。

7月14日 ― 本祭

正午の祭典後、太鼓台と曳山が巡行。夕暮れまで花鉾山車が曳き回され、夜には太鼓台のぶつけ合いが行われます。

7月15日 ― 例大祭

日吉神社で例大祭と年行司受渡し式が行われ、三日間の祭りが締めくくられます。

氷見の夏を体感する祭り

町内には多くの屋台が並び、縁日のにぎわいも楽しめます。昼は華やかな曳山、夜は提灯に照らされた幻想的な山車と太鼓台。勇壮さと優美さが共存する氷見祇園祭は、まさに港町の誇りです。

疫病退散の祈りから始まり、幾度もの大火を乗り越え、地域の絆によって守られてきた伝統行事。氷見を訪れるなら、ぜひこの三日間に足を運び、歴史と熱気に満ちた祭りの鼓動を体感してみてはいかがでしょうか。

Information

名称
氷見祇園祭
(ひみ ぎおん まつり)

高岡・氷見

富山県