上日寺は、富山県氷見市朝日本町に位置する高野山真言宗の古刹で、山号を朝日山(あさひざん)といいます。白鳳10年(681年)、法道上人によって創建されたと伝えられ、かつては泰澄大師が修行した霊地とも語り継がれてきました。富山湾に面した朝日山の中腹にあり、晴れた日には富山湾越しに立山連峰から昇る朝日を望むことができる景勝地でもあります。その美しい日の出にちなみ、「朝日山上日寺」と号されています。
上日寺は「北陸三十三ヵ所観音霊場」の第23番札所として、多くの参拝者を迎えてきました。本尊は千手観世音菩薩で、竜宮から現れたという伝承をもつ尊像です。三十三年に一度の御開帳が行われ、その折には県内外から多くの信仰者が訪れます。長い歴史の中で、人々の祈りと願いを受け止め続けてきた観音霊場として、現在も厚い信仰を集めています。
創建以来、上日寺は幾度もの盛衰を経験してきました。平安時代には越中国守・藤原仲遠の帰依を受け、戦国時代には氷見森寺城主・長澤筑前守の庇護のもと伽藍が整えられました。江戸時代には加賀藩主前田家の祈願所となり、1614年(慶長19年)には前田利長より山屋敷が寄進されています。
しかし、度重なる火災にも見舞われ、1639年(寛永15年)には堂宇が焼失しました。その後も再建が繰り返され、延宝8年(1680年)には九間本堂が再建されました。現在も本堂、観音堂、薬師堂、鐘楼堂、閻魔堂、奥の院、鎮守堂などが建ち並び、歴史の重みを感じさせる境内風景を形づくっています。
境内入口にそびえ立つ上日寺のイチョウは、1926年(大正15年)10月20日に国の天然記念物に指定された名木です。創建当時に植えられたと伝えられ、推定樹齢は1000年を超えます。樹高約24メートル、幹周り約12メートルを誇り、その太さは富山県内の全樹木の中で第一位とされています。
雌株のイチョウとしては全国第一位ともいわれ、日本屈指の巨樹です。長年の風雪や落雷により主幹上部が失われたものの、1991年には国の補助を受けて樹木医による治療が施され、現在も力強く枝葉を広げています。
秋になると境内一面が黄金色に染まり、訪れる人々を魅了します。10月末には多くの銀杏を実らせ、その量は180リットルにも及ぶといわれています。古くから霊木として尊ばれ、「銀杏精舎」とも称された上日寺の象徴的存在です。
毎年4月17日・18日には「ごんごん祭り」と呼ばれる祭礼が行われます。この祭りは、江戸時代初期に起こった大干ばつの際、観音様に雨乞いの祈願を行ったところ恵みの雨が降り、その喜びを鐘を打ち鳴らして祝ったことに由来します。
現在では、報恩と厄除けの法会とともに「ゴンゴン鐘つき大会」が開催され、重さ約50キログラムの松の丸太を担いで釣鐘を打ち鳴らします。1分間に何回打てるか、また鐘の音色の美しさを競うこの催しには、県内外から多くの力自慢が参加します。参道には露店が並び、多くの参詣者で賑わう春の風物詩となっています。
本堂は向唐破風造銅板葺の向拝を備え、重厚な佇まいを見せています。観音堂や薬師堂、閻魔堂などもそれぞれ趣があり、静かな境内を歩きながら歴史の重みを感じることができます。
また、朝日山公園に隣接しているため、自然散策とあわせて参拝できるのも魅力です。高台から望む富山湾の景色は格別で、晴天の日には遠く立山連峰を望むことができます。
上日寺は、千三百年以上にわたり人々の祈りを受け止めてきた歴史ある寺院です。壮大なイチョウの巨木、厳かな堂宇、そして春のごんごん祭りと、見どころは尽きません。観音信仰の心に触れながら、ゆったりとした時間を過ごすことができるでしょう。
アクセスはJR氷見線氷見駅から徒歩約15分。氷見市街地からも近く、観光の途中に立ち寄りやすい立地です。歴史と自然が織りなす朝日山上日寺を、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。