海王丸は、日本の航海練習船として誕生した大型練習帆船です。本稿でご紹介するのは、1930年(昭和5年)に竣工した初代海王丸です。優雅な純白の船体と美しい帆姿から「海の貴婦人」と称され、約半世紀にわたり日本の海事教育を支え続けました。
1989年(平成元年)に現役を引退した後は、富山県射水市海王町にあるみなとオアシス 海王丸パークで保存・公開されています。現在も現役当時の姿のまま係留され、訪れる人々に海のロマンと歴史を伝えています。
海王丸は、商船学校の練習船として誕生した大型帆船です。昭和5年(1930年)2月14日、セントバレンタインの日に進水しました。以来、59年余りにわたり106万海里(地球約50周分)を航海し、11,190名もの若き航海士を育て上げました。その優雅な姿から「海の貴婦人」と称され、多くの人々に愛されてきました。
1927年(昭和2年)、鹿児島県立商船水産学校の練習船「霧島丸」が暴風雨により沈没し、乗組員と生徒あわせて53名が命を落とすという痛ましい事故が発生しました。この事故を受け、安全で本格的な大型練習帆船の建造が決定されます。
こうして建造されたのが、姉妹船である日本丸と海王丸です。設計はスコットランドの造船会社が担当し、建造は神戸の川崎造船所(現・川崎重工業)で行われました。当時としては破格の大型国家プロジェクトであり、「日本の海の王者たれ」という海運界への期待が込められていました。
竣工後、海王丸は太平洋を中心に数多くの遠洋航海を実施しました。戦後はロサンゼルスへの遠洋航海をはじめ、日米修交百年祭やカナダ建国百年祭などの国際行事にも
戦前は太平洋を中心に遠洋航海を行い、戦後も復員船として約27,000人を輸送。その後再び白亜の帆を掲げ、ロサンゼルス遠洋航海、日米修交百年祭、カナダ建国百年祭など国際行事にも参加し、日本の海事教育と友好の象徴として活躍しました。
太平洋戦争中には帆装を外し、石炭輸送船として任務に就きました。船体は灰色に塗られ、本来の優雅な姿とは異なる時代も経験します。しかし戦後、再び帆装を取り戻し、白く塗り直された姿は「海の貴婦人」として再び多くの人々を魅了しました。
1989年9月16日、海王丸の役割は二代目海王丸へと引き継がれ、海王丸はその長い航海人生に幕を下ろしました。その後、富山県射水市の富山新港に係留され、1992年に海王丸パークが正式オープンしました。現役当時の姿のまま保存・公開されています。
現在も船舶安全法に基づく検査を受ける「現役船舶」として維持され、船長以下乗組員も任命されています。1997年および2012年には大規模修繕が実施され、文化財的価値を守り続けています。
2018年7月20日には、日本船舶海洋工学会より「ふね遺産」第11号に認定され、その歴史的・文化的価値が正式に評価されました。また、一般公開開始以来の累計乗船者数は200万人を超え、海洋教室には延べ34,000人以上の子どもたちが参加しています。
船種:4本マストバーク型帆船
総トン数:2,238.40トン
全長:97.05メートル
型幅:12.95メートル
定員:168名
メインマスト高:46メートル(海面から)
総帆数:29枚(総面積2,050㎡・約1,245畳分)
29枚の帆が一斉に広がる姿は圧巻で、青空と海を背景にした姿はまさに芸術品のようです。船内は歴史的な海洋博物館としても見どころが多く、操舵室や訓練設備などを見学できます。
前部航海船橋:エンジン航行時に操船する場所。レーダーやエンジンテレグラフなどを備えます。
バウスプリット:船首から突き出た約17mの斜檣。帆走のバランスを保つ重要な部分です。
訓練生宿泊室:2段ベッドが並ぶ質実な空間。現在は海洋教室の宿泊施設として活用。
機関室:左右に1基ずつエンジンを備える心臓部。
船長公室・士官サロン:来賓との面会や会議が行われた格式ある部屋。
舵輪:帆走時に操作する操舵装置。公式行事の舞台にもなります。
船内に設置されているタイムベルは、かつて時刻を知らせる重要な設備でした。訓練生が丁寧に磨き続けたため、今も金色に輝いています。
進水日がバレンタインデーであることから「幸せのベル」と呼ばれ、多くのカップルが鳴らしています。穏やかな音色が海辺に響き、特別な思い出を演出します。
海王丸の最大の見どころが、年約10回行われる総帆展帆(そうはんてんぱん)です。29枚すべての帆を広げる姿は壮観で、多くの観光客を魅了します。ボランティアの協力により行われるこの行事は、帆船文化の継承の象徴でもあります。
さらに海の日には、マストに登った乗組員が整列する登檣礼(とうしょうれい)が行われ、満船飾とともに港が華やかな雰囲気に包まれます。
海王丸の進水日が2月14日であることから、海王丸パークは「恋人の聖地」に選定されています。園内には「幸せの鐘 愛のタイムベル」が設置され、未来を誓うカップルが鐘を鳴らす姿が見られます。
夜にはライトアップされた海王丸が幻想的に浮かび上がり、ロマンチックな雰囲気を演出します。船上結婚式や「海王丸恋人フェスティバル」なども開催され、特別な思い出づくりの場として人気です。
富山県射水市海王町に広がる海王丸パークは、初代帆船海王丸をシンボルとする海浜公園です。富山湾を望む絶好のロケーションに位置し、年間およそ100万人が訪れる県内屈指の観光スポットとして親しまれています。「みなとオアシス海王丸パーク」として登録されており、海と人、港と文化を結ぶ交流拠点となっています。
純白の帆船と青い海、そして遠くに連なる立山連峰。さらに、日本海側最大級の斜張橋である新湊大橋が優美な姿を見せ、港町ならではの壮大な景観を演出しています。潮風に包まれながら、歴史とロマンを感じるひとときを過ごすことができる場所です。
展望広場からは富山湾、雄大な立山連峰、そして日本海側最大級の斜張橋である新湊大橋を一望できます。青い海と白い帆船、赤い橋のコントラストは絶景です。
海王丸パークは「恋人の聖地」に選定されています。夜には約400個のLEDと21基の投光器によるライトアップが行われ、色彩が変化する幻想的な姿を楽しめます。
日没から22時まで毎日実施されるイルミネーションは、新湊大橋のライトアップとの共演が魅力です。また「海王丸パークから眺める月」は日本百名月にも選ばれています。
海王丸は単なる展示船ではありません。海洋教室や講座、結婚式、イベントなどを通じ、今も人々と海をつなぐ役割を担っています。2015年には全国豊かな海づくり大会の会場となり、多くの人々がその雄姿を見守りました。
平成30年4月に整備された展望広場からは、富山湾、立山連峰、新湊大橋、海王丸を一望できます。ゼンマイ式の多言語音声案内付き双眼鏡も設置され、観光客への配慮も充実しています。
春から秋には花壇や花の迷路も整備され、写真撮影スポットとしても人気を集めています。
園内の日本海交流センターは、海洋文化への理解を深める施設です。世界の代表的な帆船の100分の1模型12隻をはじめ、海・港・船に関する多彩な展示が並びます。
海底鉱物資源や港湾の役割など、ダイナミックな海洋の世界を学ぶことができ、見る・知る・学ぶを通して海への理解を深められる情報発信基地です。
隣接する海王バードパーク(富山新港臨海野鳥園)は、約160種類の野鳥が記録されている自然観察エリアです。池やヨシ原、樹林地が整備され、渡り鳥の重要な休息地となっています。
観察センターや観察小屋からは自然な姿の野鳥を間近に観察でき、春にはヒナの子育て風景も見られます。探鳥会や講演会も開催され、自然とのふれあいを深めることができます。
約18,200㎡のイベント広場では花火大会や地域イベントが開催され、長さ180mの緑のパーゴラからは海王丸を望みながら散策が楽しめます。
大型遊具「波のハンモック」や広々とした芝生スペースがあり、家族連れで賑わいます。アウトドア気分を満喫できる広場も整備されています。
海辺に近い親水護岸ではロマンチックな時間を過ごすことができ、ラジコン広場では本格的なレースも楽しめます。
園内にはカフェや飲食店があり、日本海の新鮮な海の幸を味わえます。新湊観光船では富山新港や内川を巡るクルーズも運航され、港町ならではの景色を堪能できます。
世界を渡った帆船であり、日本の海事教育の象徴でもある海王丸。その優雅な姿と力強い歴史は、訪れる人の心に深い感動を与えてくれます。
さわやかな潮風を受けながら、純白の帆船とともに海のロマンを体感してみてはいかがでしょうか。海王丸と海王丸パークには、世代を超えて語り継がれる物語が、今も静かに息づいています。
北陸自動車道小杉ICから車で約20分。国道8号鏡宮立体交差から北へ約10分。万葉線新湊港線「海王丸駅」から徒歩約5分と、アクセスも便利です。
入園は無料で、海王丸の船内見学は大人400円で楽しめます。
海王丸パークは、歴史・自然・学び・ロマンが融合する特別な場所です。純白の帆を広げた海王丸の姿は、訪れる人々に感動と誇りを与えてくれます。
さわやかな潮風を感じながら、「海の貴婦人」とともに海のロマンを満喫してみてはいかがでしょうか。ここには、世代を超えて愛される海の物語が、今も静かに息づいています。