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黒薙温泉

(くろなぎ おんせん)

大自然に包まれた秘湯の魅力

富山県黒部市宇奈月温泉にある黒薙温泉は、黒部峡谷の奥深くに佇む秘湯です。古くから湯治場として親しまれ、雄大な自然と澄みきった空気の中、心と体を癒す場所として多くの人々に愛されてきました。黒部峡谷鉄道の黒薙駅から山道を歩いて約20分。アクセスは決して容易ではありませんが、それこそがこの温泉の静寂と魅力を守り続けている理由です。

黒薙温泉の泉質と効能

良質な単純温泉

黒薙温泉の湯は単純温泉に分類され、低張性・弱アルカリ性・高温泉として知られています。源泉温度はなんと98.3度にも達し、加水して温度調節を行いながら利用されています。
湧出量は毎分479リットルと豊富で、pH値は8.11溶存物質は542mg/kgとされています。このアルカリ性の湯は肌触りが柔らかく、「美肌の湯」としても知られています。

温泉宿の概要と宿泊体験

黒部観光開発株式会社が運営

黒薙温泉は現在、富山地方鉄道グループの黒部観光開発株式会社が運営しており、黒部峡谷鉄道のトロッコ列車が運行する期間のみ営業しています。温泉宿は黒薙川の清流沿いに建つ木造二階建ての一軒宿で、自然と一体化したような佇まいが魅力です。

宿泊施設と食事

客室にはテレビや娯楽機器などはなく、極めて簡素な設えとなっています。自然と向き合い、静かに時を過ごすための空間がそこにあります。川側の部屋では黒薙川の激しい流れの音が響くため、音に敏感な方には山側の部屋が勧められます(受付では耳栓の販売もあり)。
食事は素朴ながら富山の恵みが満載で、山菜、岩魚の塩焼き、昆布じめ刺身など、地元食材を活かした料理が楽しめます。

フリースペースと設備

かつて自炊宿としても利用されていた黒薙温泉は、2008年度で自炊所の営業を終了し、現在は宿泊者向けのフリースペースとして活用されています。
食堂の入口付近には、公衆電話(硬貨専用)、缶飲料の自動販売機、小型テレビ(アナログ衛星放送のみ)、新聞朝刊などが設置されており、最低限の設備が整えられています。

黒薙の湯 ― 多彩な浴場施設

内湯と露天風呂

宿には男女別の内湯があり、ゆったりとした空間で源泉かけ流しの湯を楽しむことができます。さらに、宿から徒歩3分ほど上流には混浴の露天風呂があり、雄大な自然を眺めながら開放的な湯浴みが堪能できます。

天女の湯(女性専用露天風呂)

近年では、吊橋を渡った先に女性専用の屋根付き露天風呂「天女の湯」が新設され、女性一人旅でも安心して温泉を楽しめる環境が整いました。これらの露天風呂には簡易更衣室も併設され、夜間には男女の入れ替え時間帯も設けられています。

黒薙温泉の源泉

混浴露天風呂のすぐそばにあるのが、黒薙温泉の源泉群(1号・5号・7号井)です。この源泉は、黒部川沿いを通って宇奈月温泉の宿泊施設にも供給されており、黒部峡谷鉄道の車窓からその引湯管を見ることができます。

虫対策について

7月下旬から8月にかけては、イヨシロオビアブ(方言でオロロ)と呼ばれる吸血性のアブが発生します。これに対応するため、露天風呂には大型の蚊帳が設置されていますが、虫の多さには注意が必要です。明るい時間帯の入浴は虫除け対策を万全にして臨みましょう。

通信・郵便事情

携帯電話については、2016年よりNTTドコモのエリア内となりました。ただし、日本郵便から交通困難地に指定されているため、黒薙温泉宛てに郵便物を送付することはできません。訪問の際は事前に必要な準備を整えておくことが望まれます。

黒薙温泉の歴史

開湯と藩の制限

黒薙温泉の起源は、1645年(正保2年)にさかのぼります。当時、音沢村の太郎左衛門が発見したとされますが、加賀藩は国境防衛の観点から開湯を許さず、無断入浴者はしばしば処罰されていました。

正式な開湯と登山の発展

1849年(嘉永2年)にはすでに開湯されていた記録があり、1868年(慶応4年)には加賀藩が正式に開湯を許可しました。近代登山の流行により、大正時代には登山道も整備され、地元住民や登山客が利用する温泉地として発展を遂げます。

宇奈月温泉との関係

1924年(大正13年)には宇奈月温泉への引湯管が敷設され、旧来の愛本温泉の設備に代わるものとして活用されるようになります。この引湯管を巡る所有権訴訟が、後に有名な「宇奈月温泉事件」となり、「権利の濫用」に関する判例として知られています。

災害と復興

1995年(平成7年)の7.11水害では浴場や露天風呂が流失する甚大な被害を受けましたが、翌年には再建され、現在の姿となっています。

アクセス情報

黒薙温泉へは、黒部峡谷鉄道の黒薙駅で下車し、そこから徒歩で約20分の山道を進みます。展望は素晴らしいものの、起伏の激しい登山道であるため、歩きやすい服装と履き慣れた靴での訪問が推奨されます。

まとめ ― 心と身体を癒す大自然の湯

黒薙温泉は、深山に抱かれた静けさと清冽な湯が魅力の、まさに秘湯と呼ぶにふさわしい温泉地です。古来より人々を癒してきたその湯は、今も変わらず旅人を優しく包み込んでくれます。黒部峡谷の大自然と、歴史ある湯に身を委ね、日常の喧騒を忘れる贅沢な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

Information

名称
黒薙温泉
(くろなぎ おんせん)

黒部・宇奈月

富山県