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黒部ダム駅

(くろべダムえき)

北アルプスを貫く山岳交通の要

富山県中新川郡立山町に位置する黒部ダム駅は、関西電力が運行する関電トンネル電気バスの終着駅です。立山黒部アルペンルートの重要な一角を担い、日本を代表する山岳観光地「黒部ダム」への玄関口として、多くの観光客を迎えています。

かつては日本でも珍しいトロリーバスが走る鉄道駅でしたが、2018年11月30日をもってトロリーバスは運行を終了。2019年4月15日より、環境性能に優れた電気バスへと転換されました。現在は鉄道駅ではないものの、長年親しまれてきた名称を受け継ぎ、「駅」としてその歴史を今に伝えています。

黒部ダム駅の立地と構造

黒部ダム駅は、標高約1,470メートルの黒部ダム右岸、関電トンネル内部に設けられた地下駅です。プラットホームはトンネル内のループ状部分に設置されており、到着したバスがそのまま折り返し運転を行う構造になっています。

主要な出入口は黒部ダムの堰堤上へと続くトンネルで、駅からは直接ダム展望台へ向かう地下階段(約220段)も整備されています。駅構内にはQRコード読み取り式の改札機が設置され、アルペンルートならではのスムーズな入場方式が採用されています。

関電トンネル電気バス ― 環境に優しい山岳交通

関電トンネル電気バスは、長野県大町市の扇沢駅と黒部ダム駅を結ぶ全長6.1kmの専用道路を走行します。所要時間は約16分。北アルプスの地下を貫く関電トンネル内を進み、長野・富山県境を直接結ぶ唯一の公共交通機関となっています。

この電気バスは、ディーゼルエンジンを取り外し、モーターとリチウムイオンバッテリーを搭載したCO₂を排出しないクリーンな乗り物です。扇沢駅では車載パンタグラフ方式による約10分間の超急速充電を行い、効率的な運行を実現しています。

eバスの特徴

愛称は「eバス」。車体は北アルプスの雪をイメージした白を基調とし、「黒四(くろよん)」にちなんだ黒い4本線が施されています。座席は関西電力のブランドデザイン「Harmonic Breeze」を採用し、「エンパワリング・オレンジ」「ライム」「ターコイズ」の3色が彩りを添えます。

車内のつり革には黒部ダムのマスコット「くろにょん」をモチーフにしたデザインが採用され、山岳観光の旅をより楽しく演出しています。

トロリーバスの54年の歴史

1964年8月1日、黒部ダム完成の翌年に営業運転を開始した関電トンネルトロリーバスは、排気ガスを出さない環境配慮型交通機関として選ばれました。長いトンネル内での安全性と急勾配への対応力に優れ、54年間無事故という偉業を達成しました。

初代100型、二代目200型、三代目300型と世代を重ね、累計6,162万人以上を輸送。2018年11月30日、惜しまれながらその役目を終えました。現在は一部車両が保存され、歴史を今に伝えています。

関電トンネルと破砕帯の物語

関電トンネルは黒部川第四発電所建設のために掘削されたトンネルです。最大の難所は、毎秒660リットルもの地下水と土砂が噴き出す「破砕帯」でした。7か月に及ぶ苦闘の末、1957年12月に突破。日本の土木史に刻まれる偉業となりました。

現在もトンネル内には破砕帯を示す表示や湧水を見ることができ、建設当時の壮絶な工事の歴史を体感できます。

黒部ダム ― 世紀の大事業が生んだ絶景

黒部ダムは、黒部川上流の黒部峡谷に建設された水力発電専用ダムです。1956年着工、延べ1,000万人の作業員が関わり、総工費約513億円、7年の歳月をかけて完成しました。堤高186メートルは日本一を誇り、堤長492メートル、総貯水量約2億トンという世界有数の規模を誇ります。

観光放水の迫力

毎秒10〜15トンの水が轟音とともに放たれる観光放水は圧巻です。午前中は虹が出現しやすく、夕方は逆光による幻想的なシルエットが楽しめます。標高1,470メートルの涼しい気候の中、自然と人工構造物が織りなす壮大な景色に心を奪われます。

展望スポットの見どころ

ダム展望台

黒部ダム駅から220段の階段を上ると標高1,508メートルの展望台に到着します。黒部ダム全景と立山連峰の大パノラマを一望できる絶好の撮影ポイントです。

新展望広場「レインボーテラス」

放水地点に最も近いビュースポットで、水しぶきを間近に体感できます。ミストが舞い上がる迫力の瞬間は、ここでしか味わえません。

放水観覧ステージ

堤体と同じ高さに設けられたステージからは、真正面に広がる放水の迫力を楽しめます。車いす利用者もアクセス可能なスロープが整備されています。

黒部ダムレストハウスと名物グルメ

ダム見学の合間には黒部ダムレストハウスで休憩を。名物の黒部ダムカレーは、アーチ型のライスとエメラルドグリーンのルーでダムを表現した人気メニューです。甘口から辛口まで揃い、観光の楽しみのひとつとなっています。

3階の「くろよん記念室」では建設の歴史や記録映像を鑑賞でき、映画『黒部の太陽』のトンネルセットレプリカも展示されています。

60年の歴史と未来へ

黒部ダムと関電トンネル交通は、完成から60年以上にわたり多くの人々を迎えてきました。環境配慮型の電気バスへと進化しながらも、安全運転の精神と歴史的使命は今も受け継がれています。

後立山連峰に見守られながら走るeバスと、壮大な黒部ダムの景観。自然と技術、挑戦と継承が織りなすこの地は、日本を代表する山岳観光地としてこれからも多くの感動を届け続けることでしょう。

Information

名称
黒部ダム駅
(くろべダムえき)

立山・室堂

富山県